滅亡のための前奏曲〜第4幕




サーパンツホールドにあるその村は、過疎化に悩まされる小さな村だった。

ジャングルと海に囲まれ、観光資源があるわけでもなく、村の外にはヘビやワニがうろつき危険と隣り合わせの村だ。
PSC取りに訪れる冒険者が落としていくわずかな金と、沿岸で釣る魚だけが村の収入源。


この村の村長は代々禿が引き継ぐ


若者が都会へでていってしまうため、過疎化には悩まされていたが、
クラインやバーンズなどの若者たちは村の娘と所帯をもつ話がすすんでいたし、
村はずれの神殿には、若いシスターが移り住んできて、何かと村人を助けてくれる。
どこにでもあるような、小さな、ささやかな暮らしを営む村、だったのだ。

そう・・・ほんの一月前までは。

「悪夢を見る」

最初にそういいだしたのは、誰だったろうか。

夢の名前は覚えていない。ただ、とてつもなく気味が悪い、
どうしようもない悪夢を見た。それだけは覚えている。
一人二人ならば、夢見が悪かったですむだろう。しかし、村人全員が同じような悪夢を見るとなれば話は別だ。

そして、割れるような頭痛を感じ、突然・・・そう、前触れもなにもなく、
狂死してしまうのだ。

目の前で談笑していた者が突然、叫びだし、地に倒れ付して事切れてしまう。
朝になって、ベットの中で苦悶の表情を浮かべたまま、息絶える者もいた。
絶叫をあげ、海に飛び込む者もいれば、ジャングルの奥へ姿を消して、
そのまま帰ってこなかった者もいる。


何かの呪い・・・・そうとしか、考えようがなく、人々は
宿屋に避難し、お互いを監視するしかなかった。


その村は魔人復活のための実験場として選ばれた。

実験には多数の魂と1つの器が必要。復活のための器は新鮮な死体。
魂は人間を呪殺する事で抽出できるが、魂を上手く抽出するには、時間をかけて
呪殺の儀式を行わなければならなかった。


村人たちにクグツの術をかけた上で呪殺の儀式を行っていくため、
村人たちは自分たちが術をかけられ、儀式の供物となったことは覚えていない。
ただ、悪夢というあいまいなものしか残らないのだ。


だが・・・ごくまれに、体質的に耐性のある者もいる。
その一人・・・・我らFoAの記憶をもった者が逃げ出し、SST酒場へ逃げ込んだとの報告に
村人から儀式の詳細がもれぬように、暗殺命令がだされた。


SSTへと向かうFoA


村人を守るように、騎士たちが布陣していた。
しかし、そこは陽動と刺客に分かれて、騎士たちをかく乱させる。
暗殺を命じられたとりきちは、援軍にきた魔王軍のSUZUと共に、
酒場の前で騎士たちに村の窮状を訴える村人のマイクの口を封じた。

その後、魔王城へ撤退した我らを騎士たちが包囲するが、各自脱出をする。


村人の管理という大任をおおせつかっていた死神に仕えるシスタープリムは
FoAを脱退し、どこかへ旅立ったかのように偽装し、村人たちの監視を強化することにしたのだ。

そう・・・しばらく彼女が姿を見せないことを、あやましまれないようにするために・・・



「SST酒場へいってみようとおもうべ」

そういいだしたのは、クラインだった。
行方不明になってしまったマイクから、SST酒場の噂を聞いたことがあるというのだ。

「マイクがいってたべ。大陸のミノックの近くには、騎士さまたちがいらっしゃる酒場が
あるそうだべ。そこさいけば、騎士さまたちの力が借りれるそうだべ」

宿屋にて相談する村人たち


本当に騎士が駆けつけてくれるのだろうか。
そんな不安はあったものの、打てる手はうっておこうということで
バーンズとクラインがSSTへと旅立った。



サーパンツホールドから旅立って四日後。
クラインとバーンズはSST酒場へ辿り着いた。
村でおこっている事件を訴える彼らに、騎士たちは興味深そうに
話を聞いてくれる。




そして、信じられないことに・・・行方不明になっていたマイクが
ここを訪ねてきたというのだった。

FoAと言われるが・・・・彼らにはそんな名前にはまったく聞き覚えがない。

彼らの懇願に騎士たちは快く了承し、ゲートを開いた。
辿り着くまで、四日かかったというのに帰りは一瞬である。

しかし・・・帰っていた彼らを待っていたのは、バーンズの恋人の死と、
残っていた村人の多くの死の知らせだった・・・・




調査をはじめようする騎士たちに、村長は宿に一泊してもらうように願う。
村人達は毎晩同じような悪夢にうなされているため、ここで休むことで
騎士たちも同じ悪夢を見ることができるかもしれない。

そうすることで、事件の解決になるのではないかという村長の願いに、
騎士たちは了承した。


そして・・・村長は孫娘のパミナとクラインを騎士たちの世話係として
宿屋に残し、バーンズと共に他の村人たちにも騎士たちの来訪を
伝えるために宿屋をでた。


「北には何も異常はなかったな・・・・」
途中でいきあった騎士、キョウスケが手伝いのためか、声をかけてくれる。


クラインの恋人、ソニアがいたはずだと思い・・・・・村長は
バーンズと別れて、ソニアの元へ急いだ。
バーンズには申し訳なかったが、クラインの帰りを待ちわびていたソニアに
恋人の帰還を知らせてやらねばなるまい。

しかし・・・村長が、北のカウンセラーホール前で見かけたのは
ソニアの変わり果てた姿だった・・・・・・




騎士たちが見回ったときにはなにもなかったというならば・・・・
騎士たちが去ってから村長がくるまでのほんの間である。

また、南の方でも死体が見つかったともいう。


また宿屋に戻り、みなで対策をとろうとしたその時だった・・・・


クラインが突然、苦しみだし、頭を破裂させて衆人監視の中で倒れたのだ。
慌てる騎士たちと、村人たち。
その興奮もさめぬうちに、今度は村長が苦しみだした。


「近寄るなっ。ひぇぇ、お願ぇだぁ、うわっ、ひえぇぇ」


孫娘パミナの呼びかけも通じず、村長もクラインと同じように死んだ・・・・


続けざまに出てくる死人に、村人たちはこれは何かの呪いだとの確信を持つ。

神殿に住むシスターに相談するしか・・・これは、騎士たちではなく
神のに祈るしかないのではないか。


そういって村人たちは、騎士たちと共に、神殿へと向かったのだった。



ひょっとしたら誰かが騎士たちを呼んでくるのではないか。
そんな予感がしていたため、プリムは村人と騎士たちの乱入してくる姿にさして驚いた様子もなく
悠然と招かざる客人を迎えた。
驚く騎士たちではあったが、村人は気がつかずに、そのままプリムへと駆け寄る。


死体はもう、十分すぎるほど集まっている。狂死した村人の死体やメアに襲わせた冒険者たちの
死体がここにはいくつも積み重なっている。

魂も十分抽出できた。騎士たちがでてきたのは計算外であったが、
それでももう今となっては騎士たちに打つ手はない・・・・・


呪いを説いて欲しい。そう懇願する村人たちに、彼女は冷ややかな微笑みを浮かべる。





「救済を与えましょう。死という名の・・・・」

慈悲の微笑みを浮かべたまま、彼女はメアに命じ、村人をメアへと喰らわせる。
ゲートが開き、FoAの信徒たちがあらわれるのと同時に、騎士の一人がプリムへと剣を叩き込むが・・・

彼女は気を失いながらも、静かな微笑みを浮かべていた。


そして。


ゲートから現れるFoA、魔王軍と赤の団の姿に、騎士たちはいまとなっては唯一の生き残り。
村娘のパミナを守ろうとする。


いならぶ騎士たちを前に、闇司教はこの村が魔人復活のための実験に使われていたことを明かした。

そして、唯一の生き残りであるパミナに、男爵がここへくるよう命じると・・・・
すでにクグツの術をかけられている彼女は、人形のようなぎこちない動きでふらふらと前へすすんでくる。


そして・・・彼女の命は、あっけなく、FoAの者がくりだした刃の前に儚く散る。
その様子にいきりたつ騎士たちに、男爵は面白いものを見せようといい、傍らにたつグランへと声をかける。

「おまえの望みのものを・・・・・」

意味深な言葉に、訝しがる騎士と、喜びに顔を輝かせる信徒長グラン。





スターシャ・・・・それは、グランの最愛の妻の名前。
愛し合い、幸せに暮らしていた二人だったのに、スターシャは騎士崩れの男によって殺されたのだ。

妻のいない世界など、グランにとって存在する価値はなく、彼はFoAに身を投じた。
そこで、妻の復活を約束されたのだ。




男爵が呪文を唱えたと同時に、青白い燐光が男爵の身体を包み・・・同じように
燐光に包まれた、美しい女性が姿をあらわした。
そう、村娘パミナの遺骸を依代として、彼女は黄泉がえりしたのだ!



「スターシャ・・・・・スターシャ!」

「あなた!・・・グラン!」


夫婦の再会


しかし、再会の喜びもつかの間。スターシャは突然苦しみだし、バンシーの姿へと変じてしまう。
そして・・・騎士への呪いの言葉を吐いたまま、彼女は再び肉体を失った・・・・・。




どういうことかと憤るグラン。FoAは約束を守らないところなのだと口々にいう騎士たち。

しかし、今回のことは男爵や司教さまにとっても、計算違いのことだった。


儀式に必要な死体も、魂も揃っている。そしてわずかではあるが、黄泉がえりも果たした。
そう。おそらくは、依代とした者がマナ残量がすくなく、依代として適さなかったのだ。


そして・・幸いにも、ここにはカタリナをはじめとした、素材に向いている女性がいる・・・・。


騎士たちへの憎悪をこめて、また妻を黄泉がえりさせるため、グランは騎士へ再び刃をむける。

そしてここで乱戦がはじまった。


憤る騎士たちの姿を面白そうに眺めて、司教は姿を消す。残ったFoAと魔王軍は、騎士たちに撃退され、
ひとまずは・・・・・この村にも平和が戻ったといえるだろう。

もう・・・生き残りの誰一人もいない、村の平和を取り戻したところで、意味はないが・・・



グランは騙されているという騎士たちだが、これで彼の妻が黄泉がえりを果たす可能性があると
その目で確認できたからには、彼はより一層、妻の復活のために戦うことは間違いはない。


そして・・・そう。実験は成功した。

魔人・・・・・魔王キョウイチの復活にむけて、着実に事は進んでいるのだった。



SS提供:FoA諜報員&プラティさん

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送